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株式市場の存在意義について〜上場企業編〜

株式会社Mutual 公式note

みなさま、こんにちわ。前回noteを更新して1年以上経過してしまいましたが、久しぶりに記事を書いてみようかと思います。

いきなりですが、ここ1年は本当に色々なことがありました笑 プライベートでは、第1子が誕生するという人生において最も重要だとも言えるイベントを経験しました。娘はすくすくと育っており、日々親バカぶりを発揮しながら過ごしています。

仕事の面でも色々あったのですが、一番大きかったのは「より多くの人に豊かさをもたらす資本市場を構築する」という、生涯かけてでも取り組み続けたいと思えるテーマが見つかったことです。
これが具体的にどういったもので、どのような経緯で紡ぎ出されたのか、今後どのようなことをやろうとしているのかということについてはまた後日詳しく書き綴りたいと思いますが、とにかくここ最近は、よりよい資本市場を構築するにあたって何が課題となっているのか、そしてその課題をどのように解決していけばよいのかといったことを日々考えています。

ただ、ひとえに「資本市場の課題」なんていっても、論点は多岐に渡り非常に複雑なので、いきなりミクロの課題に対する解決策を考えようとしてもなかなか全体にとって意味のある答えを見出すのは難しいものです。そのため、例えば下記のような「そもそも論」に立ち返ってあるべき姿を概念レベルで整理し、個々の事象に当てはめて解決策を考えていくということが重要なんだろうなと思っています。

  • IRってなんで頑張る必要があるんだっけ?

  • 流通市場って、会社にメリットをもたらしてるんだっけ?

  • 株価って上げないとダメなんだっけ?

今回はその中でも、「そもそも株式市場の存在意義って何だっけ?」ということについて、上場企業、従業員、投資家という3つのステークホルダーの視点から私なりの考えを書き綴っていきます(長くなりそうなので、3部作に分けて書いていきますw)。是非最後までお読みいただけると嬉しいです。

それでは、本日はまず「上場会社にとっての株式市場の存在意義」について書いていきたいと思います。

会社が上場する意味って?

色んな経営者と話していると、「上場なんてやっても経営の自由度がなくなるし、莫大なキャッシュが得られるわけでもないからやる意味がない」みたいなことを聞くことがあります。
たしかに、莫大な役員報酬は払えなくなるし、色んなしがらみが増えるし、自分のクビも飛ぶかもしれません。また、株式を持っているとはいえど、現金化して使うためには株式を担保に出して融資を引く必要があるため、M&Aでイグジットして莫大な現金を手にするのとは事情が異なります。

では、上場企業は、株式市場に上場していることでどのような便益を享受しているのでしょうか?これについては色々あるかとは思いますが、個人的には主に以下のような便益を享受することができると考えています。

1. デットでの資金調達がスムーズにできるようになる
2. 採用力がアップする
3. 社内管理体制やガバナンス機能を強化することができる
4. エクイティでの資金調達機会が増す
5. 自社のあるべき姿の解像度を上げることができる

1〜3は、「たしかにそうだよね〜」と納得される方も多いのではないかと思います。実際に、IPOを行った会社に対して東証が実施しているアンケートでも、このあたりは上場のメリットとして実感されている声は多いようです。

資金調達機会を提供する機能は十分に発揮されていない?

続いて4について。これは「当たり前やん!」と思われるかもしれませんが、実はマザーズに上場した後に市場から資金調達を行なっている会社は2015年1月〜2021年5月までの約6年半の間でたったの31社しか存在しません。

第1回公開価格の設定プロセスのあり方に関するワーキング・グループ

これは、

・既に未上場のフェーズで多額の資金調達を完了させていること
・時価総額が小さい段階で調達を行なっても希薄化する割に大した金額が集められないこと
・マザーズの時価総額や流動性では機関投資家がなかなか入ってきづらいこと
・そもそも積極的に資金調達を行おうとしている会社が多くないこと

等々色々要因はあるかと思いますが、これを見ると「あまり早いタイミングで上場するのは得策ではないのでは?」と考えられるかもしれません。
最近は日本でもVC、CVCの投資活動が活発化しており、未上場の段階でもエクイティで調達しやすくなってきているため、積極的に資金調達を行い、赤字も許容しながら成長していくスタートアップの場合は特にそう思いやすいでしょう。

ただ、個人的には上場後に上記の1〜3のメリットを最大限活かしながらファンダメンタルを成長させ、それに伴い時価総額が一定拡大してきたタイミングで大きく調達し、成長投資を行うという戦略ももっととられてもいいよなぁと思います。グロースするための市場なのに、グロースするための資金調達がほとんど上場前でしか行われていないというのは、どうもやるせない気がしてしまうのは私だけでしょうか。
このあたりも書き始めるとと冗長になってしまう恐れがあるので、とりあえず4に関しては、本来的にはメリットであるはずだけど実際には享受している会社は少ないということだけ述べておきます。

IR活動が会社にもたらしうるメリットとは

そして、私が個人的に一番重要だと思っているのが5です。
上場企業と非上場企業では多くの点で環境が異なりますが、そのなかでも「IR活動の有無」は大きな違いだと思います。
もちろん、非上場企業でも、複数の外部株主が存在する場合はIR活動は存在しますが、上場企業の場合は、社会の公器となることから広く一般に情報開示を行う必要性が出てきます。また、機関投資家や個人投資家に向けて広く対話を行っていく必要性も生じます。

このIR活動、一見すると「大変そうだよなぁ」と思うかもしれませんが、実は会社に大きなメリットをもたらしている(正確には、もたらしうる)と思います。なぜなら、「投資家との対話」と「情報開示」を通じて、会社の中長期でのあるべき姿の解像度を高めることができると考えられるからです。

投資家との対話

上場企業はIR活動の一環で機関投資家や個人投資家と対話をする機会がありますが、そのなかで投資家から示唆深い見解やアドバイスをもらうチャンスがあります。「いや、投資家より会社側の方が事業に詳しいんだから、そんな意味のあるアドバイスなんてもらえないっしょ」と思われる方もいるかもしれませんが、投資家は複数の類似会社を俯瞰して見ていることから、競合優位性に関して鋭い洞察を持っていたり、会社に対するマーケットからの評価を(相対的に)精緻に理解していることもあります。なので、投資家との対話を通じて貴重なインサイトを獲得できる可能性は十分にあります。
また、「あ、自分達ってこういう風に見られているんだ」という肌感を得るだけでも結構貴重なのかなとも思います。こういった投資家との対話を通じて、自社が今何をすべきなのか、中長期でどうあるべきなのかということについて解像度を高めることができるのではないでしょうか。

情報開示

加えて、「情報開示」も自社のあるべき姿の解像度を高めるための貴重な活動だと思います。
最近は、企業が中長期で成長するのかどうかを判断するために必要となりうる財務情報・非財務情報の開示を求める声が年々強まっていますよね。そのため、有価証券報告書、決算短信、決算説明資料等のこれまで開示してきた情報に加えて、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書、気候変動や人的資本に関連する情報等々
を開示する会社が急速に増えています。

正直、「いや開示せなあかん事項多すぎ。マジで勘弁してくれ・・・」と思われている実務担当者や経営者は多くいるかもしれません。
ただ、要求されている開示情報の中には、自社が長期的に成長するにあたって非常に重要な項目が必ず存在します。それがまさに「マテリアリティ」なわけですが、これを見つけにいく過程では、自社が長期でどうあるべきなのか?長期間成長するために何が重要な要素となるのか?といったことを真剣に考える必要があります。
短期的な業績も重要ですが、目先のことばかり集中していると、昨今の情報開示ニーズをなかなか満たすことはできません。逆にいうと、昨今の情報開示ニーズを満たそうと思ったら、嫌でもロングタームでの自社のありたい姿の解像度を高めざるを得なくなるということです。
もちろん時間もコストもかかるため大変ではありますが、こういった「あるべき情報開示から逆算して中長期のあるべき姿を描く機会があること」も株式市場の非常に重要な存在意義の一つなのではないでしょうか。

おわりに

今回は、上場企業にとっての株式市場の存在意義について書いてみました。上場することは本当に大変ですが、上場しているからこそ得られる便益も色々あるんだということが伝われば嬉しいです(無論、どこまで便益を享受できるかは会社次第ですが)。

次回は、よりよい資本市場を考える上でめちゃくちゃ重要なステークホルダーである「従業員」にとっての株式市場の存在意義について書いていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!!


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