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3267:フィル・カンパニーの決算分析

株式会社Mutual 公式note

突然ですが、皆さんが土地持ちだったとしたら、その土地をどのように活用していきたいと思いますか?
自分の家を建てるもよし、高値で売るもよし、商業施設を建てるもよし、、、このように、土地の活用方法は色々あって、空き地のままほったらかしで何も収益を生まない場合もあれば、うまく土地が活用できて大きな収益を生み出す場合もあります。

そしてその土地の活用方法の一つに、「駐車場」があります。駐車場は、なんといっても「低コスト」で土地の活用を開始することができるという特徴があります。
土地の上に建物を建設し、賃貸することで土地を活用していく場合、建設コストが大きくかかってくるため、もし入居者を確保することができなければ大きな損失を被ってしまう一方で、駐車場は、基本的に土地を整備するだけで活用できるようになるため、賃貸等と比べて圧倒的に低予算・低リスクでスタートすることができると言えます。

しかし、低予算・低リスクである分、見込めるリターンにも限界があります。そのため、駐車場経営をスタートしたものの、もう少しリターンを大きくしたいと考えている土地オーナーは結構いると考えられます。

とはいえ、一度作った駐車場を壊して新しく建物を建てるっていうのも結構難しいですよね。また、建設期間中は収入が途絶えるわけです。
そんな土地オーナーの悩みに着目したのが、「フィル・カンパニー」という会社です。少し前置きが長くなりましたが、今回はそんなフィル・カンパニーの決算書を見ていきたいと思います。

1. フィル・カンパニーのビジネス

フィル・カンパニーは、駐車場はそのまま残したうえで、駐車場の上に建物を建設し、そこに飲食店やジム等のテナントを招致する「フィル・パーク」をメイン事業として展開しています。
同社は「空中店舗」と呼んでいますが、ざっくり言うと、駐車場の上に空いている空間を使って収益化しちゃいましょうよ!ということです。

有報を見ると、フィル・パークのビジネスは、主に「請負受注スキーム」と「開発販売スキーム」の2つがあります。
それぞれどのようなビジネスモデルなのかを簡単に見ていきましょう。

まず、「請負受注スキーム」は、フィル・カンパニーが土地オーナーに対して、「あなたが所有している土地の上にうちが建物を建設するので、業務委託費と工事費をくださいね」というスキームです。
土地オーナーからすると、これまで駐車場会社からの収入一本であったものが、テナントからの収入も見込めるようになり、かつ建設した建物も一緒に管理してくれるから、対価を払ってフェル・カンパニーに建設をお願いしてみようとなるのです。
有報に掲載されている事業系統図を見てみましょう。

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ポイントは、フィル・カンパニーは、建築会社や設計事務所へ費用を支払う前に、土地オーナーから工事費や業務委託日を受け取っているという点です。
19/11期の決算説明資料を見ると、先にお金が入る仕組みを構築しているために、受注増による財務負担が発生しない旨が述べられています。

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つまり、基本的には受注の急増による資金繰りの悪化を気にする必要はないということです。
実際に直近期のBSを見ると、前受金がかなり大きくなっていることがわかります。

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それでは次に、「開発販売スキーム」について見てみましょう。
同じく有報の事業系統図から開発販売スキームのビジネスモデルを確認してみます。

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ほとんど請負受注スキームと変わらないようにも見えますが、開発販売スキームでは、フィル・カンパニー自身がオーナーから土地を仕入れてそこに建設をした状態で、不動産投資家に販売するようになっています。
開発販売スキームでは、先に土地を仕入れてから建設費用を支払い、その後で投資家に販売を行うようになっていることから、請負受注スキームと異なりキャッシュは先行して出ていくようになっています。
そのため、両事業ごとに着目するべき点が異なってくるという点に注意が必要です。

2. PLよりも重視すべき指標

さて、そんなフィル・カンパニーの直近5年間の業績推移を見てみましょう。

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売上高、経常利益、営業CF全て順調に伸びていることが分かります。
また、従業員数が意外とすくないことにも目がいきますね。

しかし、フィル・カンパニーは今年に入ってからのコロナの影響を受けており、20/11期2Qの決算短信を見ると、売上高と営業利益が急減していることが分かります。

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しかしフィル・カンパニーの場合、請負受注スキーム、開発販売スキームのいずれも、「竣工引渡時」及び「物件販売時」に売上高を計上することになっている、つまり比較的長期間の年月を経て少数の取引からドカっと売上高が計上されるため、あまり四半期ごとに区切って業績評価をしても意味がないと言えるのです。

では、四半期ごとのPLの重要性がそこまで高くないのであれば、一体どこを見るべきなのでしょうか?
まず、請負受注スキームの場合、重要なのは「今どの程度のプロジェクトが走っているのか」ということと、「新規でどの程度受注できているのか」ということになります。
フィル・カンパニーの場合、毎四半期の決算短信で受注等に関する状況を開示してくれているので、そこから確認してみましょう。
まず、請負受注スキームの、各四半期における「受注高」、「受注件数」、「受注残高」を見てみます。

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これを見ると、20/11期の2Qは、新規の受注件数が0件になっています(受注高が9百万円ありますが、細かいので気にしない)。
ただ、受注残高は3,192百万円ありますよね。これはつまり、ここからしばらくはまだ請負受注スキームから売上高が発生することを意味しています。過去に受注した案件について売上が計上されるということですね。

ということは、請負受注スキームに関しては、直近で受注件数がゼロになっていたとしてもすぐに危ない状況になるわけではありません。
しかし、数年経ったときにこのしわ寄せがやってきます。そのため、仮に3Q、4Qも受注の件数がほとんどないような場合は、翌期か翌々期はかなり厳しい状況になるのではないかと考えられます。

逆にいうと、3Q、4Qの受注件数がよくなっていた場合はPLの売上が落ちていても安心できるということです。なので、請負受注スキームに関しては、PLよりもこの受注の状況を注視しておくべきだと言えるでしょう。

3. 開発販売スキームはどこを見るべきか

先述のとおり、開発販売スキームは最初にまとまったキャッシュが必要になります。しかし、フィル・カンパニーのBSの貸方を見ると、そこまで大きくデットは引いていないことが分かります。

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つまり、請負受注スキームで獲得した前受金をもとに、用地を取得したり建物を建設したりしているということです。
ここで、開発販売スキームにおける「開発プロジェクト総額見込」と、過年度の「用地取得契約件数」を見てみましょう。

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直近時点では、プロジェクト総額見込(将来の売上原価見込金額)が前年より大きくなっていますよね。これはコロナが流行する前にあたる前期4Qに用地を4件取得している影響が大きいと思われます。

しかし、今のフィル・カンパニーの直近のキャッシュ残高は2,466百万円。そして、請負受注スキームからの前受金も今は入ってきていない状況なので、現時点では進行中のプロジェクトを完了させたり新たに用地を仕入れたりするのは難しい状況になっているものと考えられます。
そのため、請負受注スキームの受注が回復しない場合、開発販売スキームの販売引渡件数(売上計上件数)は3Q、4Qともにゼロとなってしまう可能性は十分に考えられます。

つまり、開発販売スキームを見るにあたっても、請負受注スキームの状況を注視すべきだと言えるのです。
また、用地取得件数については着目しておくべきだと言えます。この用地取得件数がゼロのままだと、それだけフィル・カンパニーが今用地取得にキャッシュを使っている場合ではないと考えているということになるし、逆にこの件数が増え出してきた場合は、フィル・カンパニーの資金繰りに余裕が出てき始めているサインだとも言えます。

4. フィル・カンパニーは危険なのか?

では、フィル・カンパニーは危険なのでしょうか?
これを判断する上で最も重要なのは、やはり請負受注スキームの受注件数だと言えるでしょう。
これが回復してきたら、前受金の入金により再び資金的な余裕も生まれるため、開発販売スキームを再開していくことが可能になります。
また、デットを活用して用地の取得を積極化することも可能だと考えられます。そのため、請負受注件数が回復してきたら、また売上や利益も順調に伸びていくのではないでしょうか。

では、仮にしばらく請負受注件数がなかなか回復しなかった場合は危険なのでしょうか?
あくまで筆者の主観ですが、そこまで危険視する必要はないのでは?と思っています。というのも、この会社は、開発プロジェクトを中止して、土地の仕入れをストップすれば、基本的に販管費支出と有利子負債の返済以外キャッシュアウトがないのです。
で、有利子負債は先ほど見たとおり長短合わせて400百万円程度であり、また、販管費も年間800百万円程度だと思われるので、しばらく全くキャッシュインがなくても食いつないでいくことができると考えられます。

もしコロナがここから数年間収束せず、土地オーナーに営業できないような状況が続けばもちろん相当危ないですが、このまま数年間事態が収束せずに経済活動が復活しないこととなる可能性はそこまで高くないのではないでしょうか。
そう考えると、現時点ではそこまで危険度が高いとは言えないのではないかと思っています(あくまで私見です)。

恐らく、もう少しコロナが落ち着いたら再び土地オーナーへの営業に力を入れていくのでしょう。そうなったときに請負受注件数がちゃんと増えるかどうかが重要なので、今後はそこに着目していければと思います。

ちなみに、フィル・カンパニーだけでなく、他の不動産デベロッパーや造船会社等、売上サイクルが長い会社を見る際は、「受注状況」はかなり重要になってくるので、必ず目を通されることをオススメします。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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