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1417:ミライト・ホールディングスの決算分析

株式会社Mutual 公式note

今年3月から順次開通が始まっている5G。まだまだ利用可能なエリアは少ないことから、これから時間をかけて利用可能エリアが拡大されていくこととなっています。
このように通信エリアを拡大していこうと思ったら基地局等の建設工事が必要となってきますが、この通信設備の建築をメイン事業として展開する
「ミライト・ホールディングス(以下、ミライトHD)」という会社があります。
今日はこのミライトHDについて書こうと思うのですが、通信設備の建設業界にはミライトHD以外に「コムシス・ホールディングス(以下、コムシスHD)」と「協和エクシオ」という大手プレイヤーが存在しており、ミライトはこの3社のうち売上高でみると3番手に属します。

この3社はNTTグループと深い関わりがあり、また、インフラ事業という属性上かなり似ているところがあります。そして一方で、異なる面もあります。
この共通点と相違点についても言及しながら、ミライトHDの決算書から同社の戦略や今後の成長可能性について少し考えてみたいと思います。

こんなに似ている!通信工事大手3社の共通点

さて、そんなミライトHDを含む通信工事大手3社ですが、実はかなり多くの共通点があります。まずはどのような共通点があるのかを少し見てみましょう。

①事業内容と各事業別のセールスミックス

国内の通信工事における、最大の発注元は誰でしょうか?
想像に難くないかもしれませんが、答えは「日本電信電話株式会社(NTT)」です。基本的に、通信サービスの一番大元の提供者はNTTとなっており、例えばドコモ、au、ソフトバンク等の携帯事業者は、基本的にNTTが持っている電気通信設備に接続することで、エンドユーザーに通信サービスを提供しているという構造になっています。

そのため、各社の決算資料を見ると、各社ともに概ね全体の4割程度の売上がこのNTTからの売上となっていることが分かります。

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また、ミライトHDの場合、NTT事業以外では、ICT、環境・社会、マルチキャリアといった事業を展開していますが、これも他の2社とほとんど同じような構成となっています。

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②地方通信工事会社との経営統合

そんな3社ですが、面白いことに過年度の売上高の動き方が非常に似ています。各社の過去6年間の売上高の推移を見てください。

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ほぼ同じやん!!って感じですよね(笑)
なぜこのようなことになっているのでしょうか?

基本的に、通信工事会社のNTT売上は、NTTにおける設備投資とリンクします。また、NTTにおける設備投資額は、各通信キャリア等を介したエンドユーザーのネット通信の需要にリンクしていると言えます。
そして、近年は既にネット通信の需要は飽和傾向にあるため、NTTの設備投資額もほとんど横ばいで推移してきています。

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そのため、通信工事会社としては、業界全体におけるパイの大きさが変わらないので、基本的に売上高を伸ばそうと思ったらシェアを高める他ないと言えるのです。

これにより、各社は地方の通信工事会社との経営統合を進めています。驚くことに、19/3期に3社とも、同じ日に「株式交換」により、上場会社と経営統合を行っているのです。

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これを見てしまうと、各社どこをどれくらいの価格で取得するかがあらかじめ決められていたのかな?とすら思ってしまいますね(笑)このような経営統合により、各社同じような売上高の増え方をしているのだと考えることができます。

③株価の動き方

同じ業界に属する会社同士の株価は、概ね同じような動き方をするのですが、この3社もご多分に漏れず同じような株価の動きをしています。

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では、この3社の株価はずっと同じような動きをするのでしょうか?この中のどこか1社でも、アウトパフォームをするところが出てくるのでしょうか?
ここからは、3社間の相違点に注目しながら見ていきたいと思います。

3社間の主な相違点

①営業利益率と営業CFの水準

まず、3社の相違点として「営業利益率」が挙げられます。3社の営業利益率の推移を比較してみましょう。

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これを見ると、若干ミライトHDだけ営業利益率が低い傾向にあることが分かります。
営業CFについても、コムシスHDが最も稼ぎ出しており、ミライトHDの営業CFが最も少ないことが分かります。

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収益性に差が生じている具体的な要因までは分析していませんが、恐らくセールスミックスの影響が最も大きいのでは?と思います。つまり、複数ある事業の中でNTT事業の利益率が最も高くなっているため、NTT事業の売上割合が最も小さいミライトHDの営業利益率が最も低くなっているのでは?ということです。

②ペイアウト政策

次に興味深いのが、3社のペイアウト政策に違いがありそうだということです。
まず、3社のCSの推移を表したグラフを見てください(全て各社有報をもとに筆者作成)。ちなみに、各社ともにFY19の「その他」が大きくなっていますが、この大部分は、株式交換により取得した会社が保有していたCash残高です。

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これを見ると、一目瞭然で、コムシスHDにおける財務CFのマイナス額が大きいことが分かります。これはなぜでしょうか?
各社のCSの内訳を見ると分かりますが、コムシスHDはかなり積極的に株主還元を行っているのです。しかも、営業CFが十分に出るので、特段増資や借入で資金調達をせず、自己株式取得や配当を行っていることから、財務CFが継続的に大きくマイナスとなっています。

一方の協和エクシオとミライトHDは、そこまで財務CFが大きくマイナスになっていませんよね。特に協和エクシオのFY20の財務CFはプラスになっています。
これは両社が株主還元を行っていないということを意味しているのでしょうか?3社の総還元性向(当期純利益 / 自己株式の取得額と配当支払額の合計)の推移を見てみましょう。

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コムシスHDは安定的に50%〜90%で推移している一方で、ミライトHDと協和エクシオはブレが大きいですよね。直近期ではミライトHDと協和エクシオは、多額の自己株式取得を行っていることから総還元性向がかなり高くなっていますが、主に有利子負債で調達した資金で行っていることから、財務CFは大きくマイナスにはなっていません。
つまり、各社ともタイミングや金額感は違えど、株主還元は行っているということです。

しかし、各社の直近のIR資料を見ると、各社の株主還元に関する方針が異なっていることが分かります。

コムシスHD
外部調達に頼らず、安定的に高い総還元性向を保ちながら株主還元を行っていく方針。総還元性向70%程度を継続するとのこと。
協和エクシオ
DOE3.5%を維持(DOE3.5%ベースにした20/3期の配当性向は57.2%)しながら、安定的な高配当を続ける。自己株式の取得については、市場動向、株価水準、キャッシュフローの状況を見ながら機動的に実施する方針。
ミライトHD
安定的・継続的な配当を維持しつつ、総還元性向30%以上を目線に株主還元を実施する方針。

特に、コムシスHDは総還元性向を70%程度にするという高い目標を掲げていますよね。これは恐らく、安定的に営業CFが生まれ、外部調達に頼らなくても継続的に高水準で株主還元を行っていけるからなのでしょう。

一方で、ミライトHDは総還元性向がコムシスHDと比べて低くなっています。これは、
営業CFがそこまで大きく出るわけではないので、大きく株主還元をしようと思ったら外部からの資金調達が必要になる→高水準の株主還元を約束することはできない
ということなのでしょう。
このように、各社でペイアウト政策に関する考え方は少し異なっていそうだということが分かりました。

③株式市場の評価

では、各社の株価の評価倍率はどうなっているのでしょうか?
PERとPBRを算出して、推移を見てみましょう。

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19/3期は負ののれん発生益が特別損益として計上されており、当期純利益が大きくなっているためにPERが低くなっていますが、20/3期を見ると、PERとPBRともに、ミライトHDだけ明らかに評価倍率が低いことが分かります。PBRも、唯一1倍割れとなっていますよね。

これは恐らく、営業利益率が低いが故に最も営業CFの水準も小さく、それにより、外部からの調達なしには十分な株主還元を継続的に行うことが難しいと判断されているからではないかと思います。
そもそもインフラの事業を行っているという性質上、株価のボラティリティがそこまで高くないので、自己株式取得や配当等を通じて安定的に株主還元をしてくれる会社が好まれているということでしょう。

ミライトHDの今後はどうなる?

ミライトHDに対する評価が今のところ最も低くなっていることが分かりました。では、今後もこの傾向はずっと続いていくのでしょうか?

鍵となるのは通信工事以外のソリューション事業等でどれだけ売上を伸ばしていくことができるかどうかだと思います。
先述のとおり、通信工事の業界はこれから市場規模が大きくなっていくことはあまり想定できません。また、各社とのシェアが大きく変わることもあまりないと考えられるでしょう

つまり、そこまで他社と競合しない領域でどれだけ売上高を伸ばすことができるかが勝負になりそうだということです。そのためには、グローバルでの展開も含めた、新規事業開発やM&Aによる事業拡大が重要になってくるのではないでしょうか。
特に、2016年のラントロビジョンの買収以来、通信工事会社の中でグローバルに事業拠点を構えているのは今のところミライトHDだけなので、海外展開はかなりキーとなってくるのではないかと思います。

コムシスHDと協和エクシオもそうですが、ミライトHDの有利子負債はまだそこまで大きくありません。また、政策保有株式も300億円程度保有しています。政策保有株式を可能な限り現金化し、有利子負債を活用しながら、M&A等を通じた投資を積極化させていくことができれば、十分まだ成長していく余地はあるのではないでしょうか。
ミライトHD自身も、現在の事業を「フロンティアドメイン」と「ベースドメイン」に分類していますが、このフロンティアドメインをどれだけ成長させられるかで、今後は変わってくるのだと思います。

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ということで、本日もお読みいただきありがとうございました!

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