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4443:Sansanの決算分析

株式会社Mutual 公式note

6月19日に上場を果たしたSansan。公募価格4,500から初値は4,760円をつけ、現在5,810円の値をつけて時価総額は約1,740億円となっています。今日は、そんな「The サブスク銘柄」であるSansanの決算を見ていきたいと思います。

1. Sansanの概要

Sansanは、2007年に寺田親弘氏により設立された、名刺管理サービスを提供会社です。松重豊が出てる「面識アリ」のTVCMシリーズで知ったという方も多いかと思います。
そんなSansanは、①Sansan事業と②Eight事業という2つのサービスを展開しています。有価証券報告書に掲載されている事業等系図を見てみましょう。

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両事業のどちらも、ビジネスモデル自体は非常に単純であることがわかります。Sansan事業はスキャナーをリースしてきてそれを法人顧客に貸し出し、自社のソフトウェアを利用してもらうことで利用料を得る事業です。
Eight事業は、Eightというアプリを利用してもらうことで、ユーザーからの利用料や広告主からの広告料等を収益基盤としています。

各セグメントの業績は以下のとおりです。

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Sansan事業自体は既に黒字化しているものの、Eight事業はまだまだ赤字、本社費も加味すると連結全体で8.5億円の営業赤字となっていますね。
では、ここからSansanの財務諸表をもう少し深掘りして見ていきましょう。

2. 超キャッシュリッチ企業である理由

まず、Sansanの連結PLを見てみます。

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売上高は前期比で約40%成長しています。そして驚きなのが、粗利率が非常に高いということ。直近では粗利率は84.3%という水準になっています。しかも、粗利率の推移を見ると、年々この利益率は高くなっているんですね(若干グラフは誇張してますが笑)。

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Sansanの売上原価は、主にSansan事業における「名刺入力に関連した費用」や「スキャナ・タブレッド等のリース費用」であるとのこと。Sansanの説明によると、原価率が低くなっている(=粗利率が高くなっている)要因は、「機械学習等によって人力で行なっていた名刺入力の自動化が一定程度進んでいることにより、名刺1枚あたりの入力コストが低減傾向にあるため」だそう。
正直この説明はあまりよく分かりませんが、とにかく、ここまで利益率が高いと販管費に十分カネをかけることが可能となります。そんなSansanの販管費の内訳を見てみましょう。

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18/5期は広告宣伝費にかなりのカネを使っていることがわかりますね。それもあってかこの期は販管費が売上高を超える水準となっていますが、19/5期も93%と非常に販管費に多くのカネをかけていることがわかります。
Sansan事業の売上高を増やすためには、単価を上げるか、契約数を増やすかのどちらかが必要となります。このうち、契約数を増やすためには、契約をとってこれる営業人員を増やすことが重要となります。また、知名度を高めることで営業で有利になるために、広告宣伝も積極的に行うことが重要となります。
Sansanはここに多額の資金を投入することで、とにかくSansan事業の売上高を伸ばす方針をとっているのでしょう。事実、これら広告宣伝と営業人員にカネをかけまくった結果、Sansanの契約件数は継続的に増加傾向にあります。

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では、なぜSansanは売上の90%超を販管費として計上してしまうようなカネの使い方ができるのでしょうか?次にBSを見ていきましょう。

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総資産90億円のうち56億円という潤沢なCashを持っていることがわかります。なぜこんなカネがあるのかということについては、貸方項目をみると分かります。
①年間契約等から生じる多額の前受金
②増資により調達した自己資本

①の前受金について、Sansan事業のようなサブスクリプションビジネスにおいては、基本的に月額もしくは年額等を先に受け取ることから、多額の前受金が計上されます。Sansan事業の収益は主に以下の4つから構成されているとのことですが、恐らく年間契約である「ライセンス費用」から多額の前受金が生じているのでしょう。

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このように、サービスの提供をする前にCashを一括で受け取ることから、契約件数が増えれば増えるほどに営業CFが増えていくことになります。実際、SansanはPL上の営業利益こそ赤字になっているものの、この前受金等の影響により既に営業CFは10億円の黒字となっています。

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これに加えて②増資によりかなりの資金調達をしています。18/3期に42億、19/3期に30億の増資をしており、更に今回の上場で約68億円(公募による増資21億+野村への第三者割当増資47億)を調達しているため、現時点のSansanの事業規模からすると有り余るほどの手元資金があるということです。それもあってか、有利子負債はほとんどなく、直近では投資有価証券も10億円ほど取得されていますね。
つまり、Sansanは営業CFもまわる上に、資本市場からの調達額も大きいことから、超がつくほどのキャッシュリッチ企業であると言えます。

3. 他のサブスク銘柄との違い

さて、そんなSansanですが、他のサブスク銘柄と何が違うのでしょうか?
比較対象企業として「マネーフォワード」、「ラクス」、「ユーザベース」、「シャノン」を選んだ上で、以下の観点から違いを見てみましょう。

①PSR
②営業CF率+売上成長率
③BS構成(手元Cashの水準)

まず、①サブスク銘柄のバリュエーションとしてよく利用されるPSR(株価売上高倍率)を見てみましょう。

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Sansanは他のサブスク銘柄と比べると、PSRが高くなっていることがわかります。単にこのPSRを並べてもあまり意味はないので、なぜそのような評価となっているのかを見ていきましょう。
一般にSaaS企業の評価指標として「40%ルール」というものがあり、簡単にいうと「成長率+利益率>40%」となっている企業を良しとするものです。サブスクビジネスは赤字が先行しやすいので、利益指標と併せてトップラインの成長も見ようぜということですね。
成長率は売上高の成長率を使いますが、利益率に関してはどの指標を使うべきか諸説あります。今回は「営業CF / 売上高=営業CF率」を利用して比較してみました。

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なるほど、やはりPSRが10倍を超えている3銘柄は40%ルールをクリアしてきていることがわかります。ユーザベースだけ、成長率が100%を超えているにも関わらずPSRが10倍を切ってます。前の記事でも書きましたがユーザベースはQuartz買収のための借入金返済負担が危惧されているのもあります。ということで、更にNet Cash(現預金+投資有価証券ー有利子負債で算出)の残高についても見てみましょう。

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やはり、PSR10倍を上回っている上位3銘柄は、総資産残高と比較してNet Cashが大きくプラスとなっています。安全性も然り、サブスクのビジネスにおいては営業社員の人件費や広告宣伝費等にガンガン金を使ってトップラインを伸ばしていく会社の方が有利だと言えるので、やはりキャッシュが潤沢にある会社が好まれるのでしょう。その点、Sansanは営業CF黒字かつ売上成長率も40%近くあり、Net Cashも豊富にあることから、他のサブスク銘柄と比較して高い評価になっているものと考えられます(しかも、上表のSansanのNet Cash残高は、直近の上場と第三者割当増資による調達額6,843百万円加算前です)。

4. Sansanの今後の戦略とは?

さて、これだけCashが豊富にあるSansanですが、今後はどのような戦略をとってくるのでしょうか。
Sansanは、調達した資金については「運転資金としての広告宣伝費・販売促進費等のマーケティング投資、 人件費、採用費に充当する予定」と掲げています。
たしかに、先述したとおりSansan事業は単価を上げるか契約数を伸ばすことで売上を伸ばすことが重要になります。Sansanとしては、今後は単価の高い大企業向けの契約をとりにいこうとしているとのことです。で、大企業向けの契約を取ろうと思ったら、優秀な営業マンを多数採用することが不可欠なので、ここの営業マンに対する人件費として多額の資金をつぎ込むと考えられます。

また、Eight事業についても引き続き広告宣伝費を使っていくと思います。Eight事業はSansan事業と比べると売上は少ないかつ赤字ですが、前期と比べるとマネタイズも強化されてきているので、ユーザー数を伸ばすために引き続き積極的な広告宣伝を行っていくことでしょう。

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そして決算説明資料を見ると、Sansanが次のステージとして目指しているのが、「海外展開」と「プラットフォーム展開」であることがわかります。

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海外展開は、まあそうくるよねって感じですが、名刺の文化が日本ほど根強くない海外でどのように勝負をしかけてくるのかは興味深いところです。
個人的には、API強化によるプラットフォーム展開というところが非常に大きなチャンスがあると思っていて、SansanとEightに蓄積された個人と企業のデータを利用して例えば日本版Linked Inのような人材系のプラットフォームを作り上げることも可能なのかなとか思っています(Sansanがそれを狙っているのかはわかりませんが笑)
いずれにせよ、名刺管理というビジネス的に、人材系の事業領域を攻めてくる可能性は高いと言えるでしょう。で、実際にM&Aが行われてシナジー効果をうまく発揮した暁には、この会社はかなり化けるのではないかなーと思っています。少なくとも、私の中で当初抱いていた「ただの名刺管理会社」というイメージは見当違いだったということは確信しました。笑 

ということで、本日も最後までお読みいただきありがとうございました。


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